アスベスト事前調査
【アスベスト事前調査】について◆そもそもアスベストとは?◆
アスベスト(石綿)とは、天然に存在する繊維状の鉱物で、耐熱性や耐久性に優れているため、かつて(2006年9月1日まで)は建材や様々な工業製品に広く使用されていました。しかし、その繊維を吸い込むと肺がんや中皮腫などの健康被害を引き起こす可能性があるため、現在では製造・使用が原則禁止されています。
◆アスベスト事前調査の概要◆
建築物等を解体し、改造し、または補修する作業を伴う建設工事の元請業者又は自主施工者は当該建築物等に石綿含有建材の使用の有無について調査する必要があります。
そのうち以下条件に該当する場合は、当該調査の結果を都道府県または大防法政令市に報告する必要があります。
①建築物を解体する作業を伴う建設工事※1であって、当該作業の対象となる床面積の合計が80㎡以上であるもの
②建築物を改造し、又は補修する作業を伴う建設工事※1であって、当該作業の請負代金の合計額※2が100万円以上であるもの
③工作物を解体し、改造し、又は補修する作業を伴う建設工事※1であって、当該作業の請負代金の合計金※2が100万円以上であるもの
※1 解体、改造、又は補修の工事を同一の者が二以上の契約に分割して請け負う場合においては、これを一の契約で請け負ったものとみなします。
※2 請負代金の合計額は、材料費も含めた作業全体の請負代金の額をいい、事前調査の費用は含みませんが、消費税を含みます。また、請負契約が発生していない場合でも、請負人に施工させた場合の適正な請負代金相当額で判断します。(環境省/石綿事前調査結果の報告について から引用)
◆実際の流れ◆
1.専門家または有資格者に調査を依頼
令和5年(2023年)10月からアスベスト事前調査は有資格者(建築物石綿含有建材調査者)が行うことが必須となります。
2.第一次スクリーニング(書面・図面調査)
解体・改修工事を行う前に書面や設計図から、アスベスト含有の有無の調査が必要です。資料を入手し、できるだけアスベストの有無を正確に把握することが求められます。特に高度成長期に建設された建造物はアスベスト含有の可能性が高いため、図面や登記簿謄本、重要事項説明書等で建築時期を確認することが大切です。
3.第二次スクリーニング(現地調査)
書面上だけではアスベスト含有が判断できない場合もあるため、現地でアスベストを目視で確認します。見落としやすい下地部分なども含めて、しっかりと確認する必要があります。ただし、アスベストに似た素材が使用されている場合もあり、アスベストを目視だけで見分けることは困難です。
4.採取・分析
現地調査だけでは判別が難しい場合は、アスベスト含有の可能性がある部分のサンプルを採取し専門機関に分析を依頼します。専門機関は、「定性分析」と「定量分析」という方法でサンプルからアスベストの有無を調査します。工事を進める上では、一般的にアスベスト含有率が0.1%を超えているかどうかを調査する定性分析方法で十分です。
5.報告書作成・提出
分析結果がでて、調査がすべて終了したら報告書を作成し、労働基準監督署や各自治体に事前調査結果の報告をします。解体工事開始前に報告する必要があるため、工期を見極めて計画しなくてはいけません。
報告書作成は、一般的にアスベストを調査した機関が行うため、元請け業者はそれをもとに国が運営する電子システムにて報告を行います。電子システムを使用できない場合は書面での報告も可能ですが、認証システム「gBizID」に登録することで、報告を迅速且つ簡易に行うことができます。
6.事前調査書面の発注者への説明
元請業者は発注者に対し、事前調査書面を交付して、事前調査結果を説明しなければなりません。説明は、解体等工事の開始まで(特定粉じん排出等作業が当該工事の開始の日から14日以内に行われる場合は、作業開始の14日前まで)に行う必要があります。
7.事前調査書面の保存
発注者又は自主施工者は、3年間の事前調査書面の保存義務があります。
元請業者は、3年間の事前調査書面(写)の保存義務があります。
8.事前調査書面の閲覧
元請業者又は自主施工者は、周辺住民への建築物等の石綿(アスベスト)の使用状況の情報提供のため、解体等工事の終了まで事前調査書面の写しを現場事務所などで閲覧に供する義務があります。
9.事前調査結果の掲示
解体等工事に着手するまでに、工事敷地内の公衆の見やすい場所に事前調査結果の掲示(A3判以上となる縦29.7センチメートル以上、横42センチメートル以上)を行わなければなりません。
◆最後に◆
冒頭でも記載しましたが、アスベスト(石綿)は、耐熱性や耐久性に優れているため、かつて(2006年9月1日まで)は建材や様々な工業製品に広く使用されていました。しかし先日行ったアスベスト事前調査では1987年(昭和62年)の建物でも床クッションフロアの接着剤程度しか検出されなかったこともありました。古い建築物とはいえ、必ずしも含有されている訳ではありません。アスベストが含有されているとして「みなし含有」として処分することができますが、処分コストが大幅に上がる可能性があるため、アスベストの事前調査は必要です。
